新和防災の消防設備コラム消防用設備点検
【入門】はじめての消防用設備点検(3)-消防用設備点検と防火対象物点検の違い
2021年7月21日本記事はこんな方におすすめです
- 管理会社、消防設備会社で働くことになり資格試験合格を厳命された。
- 会社の部門異動により建物管理業務を担当することになった。
- 不動産を購入して初めてビルオーナーになった。
- マンション管理組合の理事に就任したけど話がさっぱり理解できない。
- そもそも消防用設備点検ってなんですか?
【入門】はじめての消防用設備点検(2)では、消防用設備の設置義務がある建物、設置できる消防用設備、消防用設備点検の実施時期と罰則を確認しました。
消防用設備点検について学んでいると、それはそれはたくさんの専門用語が出てきます。
その中でも初心者の方が必ずと言っていいほど混乱するのが「消防用設備等点検」と「防火対象物点検」の違いです。
ということで第3回目の今回は、消防用設備等点検と防火対象物点検の違い、特に防火対象物点検について詳しく確認していきたいと思います。
では、早速いきましょう。
防火対象物点検報告制度の成り立ち
2001年に東京・新宿歌舞伎町で発生したビル火災は44人もの尊い命を奪いました。この火災は3つの事由が重なったことで多数の被災者を出したと言われています。
- 消防用設備点検が適切に実施されていなかった
- 防火管理者が選任されていなかった
- 避難経路である非常階段に障害物が多数あった
この2001年の火災をきっかけとして2002年に消防法が大幅に改正され、新しく導入されたのが「防火対象物点検報告制度」です。
消防用設備点検が消火設備や警報設備といったハード面の点検であることに対して、防火対象物点検は防火管理体制の構築や避難訓練といった主にソフト面の点検と覚えておくと良いでしょう。
防火対象物点検の対象となる建物
防火対象物点検報告制度が導入されたことで、一定条件を満たす防火対象物(ビル・マンション等の建物)の管理について権原を有する者(所有者、借受人等)は、年1回の有資格者(防火対象物点検資格者)による点検と報告が義務づけられました。
防火対象物点検報告の対象建物かどうかは建物用途と防火対象物全体の収容人数によって決まりますが、ポイントは防火対象物全体の収容人数の条件を満たす場合のみ点検報告義務が生じる「収容人数が30人以上300人未満の建物」です。
中小の雑居ビルは1階段しかない場合も多いので防火対象物点検報告の対象となるケースが多いかと思われます。以下に防火対象物点検報告の対象条件をまとめたので、よく確認しておきましょう。
防火対象物点検の対象となる建物用途 | |||
---|---|---|---|
百貨店等 | 旅館等 | 病院等 | 地下街 |
飲食店 | 料理店等 | 劇場等 | 公会堂等 |
遊技場 | カラオケ等 | キャバレー | 特殊浴場等 |
性風俗営業店舗等 | 特定用途の複合 |
全体の収容人員 | 点検報告義務の有無 |
---|---|
30人未満 | 点検報告義務なし |
30人以上 300人未満 |
|
300人以上 | すべて点検報告義務あり |
消防用設備点検と防火対象物点検の比較
本コラム冒頭でもお話したように、消防用設備点検が消火設備や警報設備といったハード面の点検であることに対して、防火対象物点検は防火管理体制の構築や避難訓練といった主にソフト面の点検です。
これまで消防用設備点検、防火対象物点検を個別に確認してきましたが、いまいち理解するのが難しいと思っている方も多いかと思いますので、ここで消防用設備点検と防火対象物点検を整理してみました。
消防用設備点検 | 防火対象物点検 | |
---|---|---|
対象建物 | 防火対象物 | 特定用途の防火対象物 |
点検箇所 | 防火対象物の消防用設備機器などハード面の点検 | 防火対象物の防火管理体制などソフト面の点検 |
点検期間 | 年2回 (機器点検:6ヵ月に1回) (総合点検:1年に1回) |
年1回 |
必要資格 | 消防設備士 消防設備点検資格者など |
防火対象物点検資格者 |
報告書の提出 | 特定防火対象物:年1回 非特定防火対象物:3年に1回 |
年1回 |
罰則 | 1年以下の懲役又は100万以下の罰金 30万円以下の罰金又は拘留 |
1年以下の懲役又は100万以下の罰金 6月以下の懲役又は50万以下の罰金 30万円以下の罰金又は拘留 |
法的根拠 | 消防法第17条の3の3 | 消防法第8条の2の2 |
まとめ
いかがでしたか?
今回は、消防用設備等点検と防火対象物点検の違い、特に防火対象物点検について詳しく確認しました。
消防用設備点検と防火対象物点検はハード面の点検、ソフト面の点検と言われており表裏一体の関係になっています。
共通する用語や似通った用語や条件が細分化されているなど、完全に理解することはなかなか難しいですが、消防用設備点検を学ぶ上で防火対象物点検を避けて通ることはできませんので、焦らずしっかりと学んでいきましょう。